Sports Column 〜戦士の休日〜

「戦士の休日」と題して、戦うアスリートのOFFの時の素顔、本音トークを、HATOMIがリポート!
不定期にお届けするので、check忘れずに!!

Vol.11 総合格闘家 須藤元気 選手

「僕は弱い人間だから格闘家になろうと思ったんです。もともと強い人間なら、“強くなろう”なんて思わないでしょ?」

須藤元気 選手

その発言はゆるやかな口調で、すべてを納得させる“鶴の一声”のようにも聞こえた。
人と同じ事をしては注目されないと、現在のような独自のファイトスタイルを築き上げてきた、少し異質な選手でもある彼が、我々に見せ続けてくれたものは、格闘技と言う名の“アート”。
変幻自在な動きで相手を油断させて一撃をかます。
彼の格闘スタイルには賛否両論の声も上がっているが、昔の武士や侍も、だまし討ちをして幾つもの戦を勝ち抜いてきた。
戦いも計算と考え、入念なリサーチを怠らない、型破りな格闘家。
そんな戦士の名は「須藤元気」。

惜しくも、先日行われた“K-1 WORLD MAX 2003”では残念な結果になってしまったが、底抜けに明るく気さくな兄ちゃんと言った感じの須藤選手をお迎えして、「Sports Column〜戦士の休日」11人目の戦士のインタヴューをお届けしたいと思います。

Q.試合前に、「中途半端ならやめる」という事をほのめかしていましたけど、今はどういう気持ちですか?

「“やめる”というのは引退ではなくて、“K-1自体をやめる”という意味だったんですよ。中途半端な形になるんだったらやめようと思ったんですが、今回は“誤魔化さない”と言うことをテーマに、自分のトリッキーさも生かした中で、正統派な部分を残しつつ、というのがあって・・・・。結果はああいう形になっちゃいましたけど、それなりの力は出せたので、今後どうしていくかと言うのはまだ決まってませんが、総合はもちろんやっていくつもりです。ただ、K-1自体はどうしようかな・・・と思ってます」

Q.今回の試合の結果は、何が原因だと思われますか?

「正直、今回はジャッジに対して“何をとられたんだろう?”という思いがありますが、たぶん試合の組み立ての部分と、ああいうルールの中での試合は4戦目だったので、経験値の浅さだと思います」

Q.ご自身で手応えがあったのは、何ラウンド目だったのでしょうか。

「何ラウンドというか、試合を通して何かをやったというのはありました。試合では常に前蹴りを意識して、相手の腹に効いてたのが分ったんです。クラウスはすごく嫌な顔してましたね。それはバックブローという回転系の動きなんですが、今度は直線+回転で中に入らせない縦の攻撃をしつつ、それでもかいくぐって入ってきたら、バックブローに合わせると言う感じでした」

須藤元気 選手

Q.須藤選手が一ヶ月かけて考え出した“秘策”というのは何だったんでしょうか?

「キックボクサーは本来、足の裏で蹴るんですけど、僕の場合、通称・点蹴りって呼んでいる親指でばかり蹴る技をやってたんで、クラウスは相当嫌がってました。これが秘策で、暇さえあれば裸足で壁を蹴ってばかりいましたよ」

Q.“勝てる!”という確信はありましたか?

「正気言って僕は、4ラウンドまで行くと思ってました。延長で勝負できるかなと思ってたんですが、3ラウンドでは自分の方がペースを掴んでいたけど、仕方ないという気持ちもあります」

Q.そんな中で、精一杯戦った後の判定については?

「ジャッジがそうつけたから仕方ない・・・・と言うしかないですね」

Q.今回の入場スタイルは、はたまた奇抜でしたが、準備と練習にはどれぐらい時間をかけたのですか?

「一ヵ月半前から、週に一回は練習していました」

Q.今回のテーマはズバリ、「ロボット」?

「そうなんです。でもあれは、真っ暗だとすごくキレイなんですよ。テレビだと照明をもらいすぎちゃって、光が見えなくなってしまって・・・・。マントを外して顔が出たら、照明を当てて欲しいと言う事をリハーサルの時に言っておいたんですけど、本番はあんな形になっちゃいました」

須藤元気 選手

Q.今回も圧倒的な強さを見せていた魔裟斗選手についてコメントを。

「いやあ、彼は凄い人だと思いますよ。言った事をちゃんとやっているし」

Q.須藤選手の格闘スタイルは“だまし討ちの美学”と言われてますが、何故そのようなスタイルに?

「僕がプロになるキッカケと言うのは、もともと体が小さいからだったんです。この体の小ささでは大きい人には勝てない、目立たないというのがあったので、海外からの逆デビューの時にドレッドにして、タトゥー入れて、入場パフォーマンスやファイトスタイルも人と違うようにしたんです。歴史上で名を残してる人物は、みんな人と違うことやってますからね」

須藤元気 選手

Q.でも試合中にああいう動きをしているのは、不利ではないんですか?

「それは逆なんです。ああいう変な動きをしていると、必ず見るんですよ。あれで攻撃して来る人は殆どいなくて、戦う人が自分の頭の中にデータがないと、人間必ず止まるんです。まず頭で考えると体が反応しないし、テンポもズレますから、まず相手に考えさせるというのも、自分の戦略のひとつかな。本能で戦ったら、相手は強いわけですからね」

Q.しかし、その格闘スタイルは、賛否両論だと思うのですが・・・・。

「100人いて100人に好かれようとしたら、それって普通で何の当たり障りもなく、注目もされないで、取材なんかもされないと思うんですよね。逆に“嫌い”って言われたり、“やめたほうがいいよ”って言われる事の方が、自分の思い通りに出来てるんだな・・・って思います。個性を出すと、好きと嫌いに分かれるわけですから、それを恐れてたら自分の好きなことなんか出来ないですからね」

Q.なるほど。だから須藤選手は、歴史上の人物が好きなんですね。でも、数ある歴史上の人物の中で、何故“坂本龍馬”に興味を示されるのですか?

「非暴力主義というのと、攻撃的じゃないんですよ。坂本龍馬は剣の達人にもかかわらず、人を殺めたことがないんです。幕末の動乱の中でさえも。やっぱり戦わない人が一番強いですよ。もともと強い人って、強くなろうって言う意識もないと思うし、格闘技とかに興味ないですよ」

Q.試合が終わった今、一番したいことはなんですか?

「自然と触れ合うのが好きなので、温泉や釣りに行きたいと思ってます」

Q.最後にファンの方へ一言お願いします。

「すべてはひとつ。身近な人から幸せにしてあげてください」

須藤元気 選手

その昔、宮本武蔵が打ち出した常識外れの流派「二天一流」というのがあったそうだが、これは平たく言うと「二刀流」のことだ。つまり、普通は刀を一本だけ持って戦うのが常識だったこの時代に、武蔵はもう片方の手にも刀を持って戦っていたという。野球のバット以上の重量のある刀を二つ持って戦うのは、少しの間なら振り回せるが、すぐに腕が利かなくなる。
これは、片手を失っても、戦闘を持続できるようにという武蔵の考えと、かなり体力を前提とした流儀であった事には変わりはないが、「武士らしくきちんとしたルールで戦え」と言う声も多々あっただろう。
しかしリアルな戦場では、戦闘のためなら何でもありの理論であり、刀剣は一本で・・・というルールなどどこにもないのだ。そんな執着や、こだわりを捨てなさい、というのが武蔵の「二天一流」であり、周囲がどうこう言おうが、それで実際に武蔵は13歳から29歳までの間、60勝という結果をあげている。

現代の戦いにしても同じ事が言える。
「二天一流」並みに、異質な事をリングで展開する須藤選手は、一本しか刀を使っていない本来の選手より遥かに体力を消耗し、“ルール”と言うものを、彼らの頭の中でことごとく打ち砕いていく。
計算高い人間は一番強く逞しく、そして歴史上に名前を残す事になる。
宮本武蔵、坂本龍馬・・・・・・そして、須藤元気。
いつしかこの戦士も、世界の頂点に立つ事を、信じてやまない今日この頃だ。

取材&構成  :  羽富敏彦
カメラ  :  森田圭祐
協力  :  (株)スーパーエージェント
須藤元気選手 プロフィール 須藤元気(すどう げんき)

1978年(昭和53年)3月8日生、東京都出身。

99年8月、ビバリーヒルズ柔術クラブ所属の逆輸入ファイターとしてパンクラスでプロデビュー。2000年5月には「コロシアム2000」に出場し、強豪アンドレ・ペデネイラスを得意の関節技やキックで追い込んだ。同年9月にはリングス初参戦。12月にはパワーオブドリーム主宰者、山本喧一選手を下し、UFC-Jチャンピオンベルトを奪取した。一方、活躍の場は格闘技の世界に留まらず、2002年10月には窪塚洋介主演「凶気の桜」(東映)で映画デビュー。その他にも普段からファッションにも関心を持っており、ストリート系の雑誌等でモデルとしても活躍する一方で「ストリートジャック」での連載も2003年4月よりスタートさせている。
格闘技、映画、モデル、全ての活動を通じて世界に発信して行きたいというメッセージは「WE ARE ALL ONE」(すべては一体である)という思想。いつか世界中の人々の心にそのメッセージを届けたい。そんな気持ちで、試合に勝つと「WE ARE ALL ONE」の文字が入った国連の旗を掲げる。身長175cm、体重73キロ。血液型B型。

須藤元気 オフィシャル・ホームページ
http://www.genkisudo.com/

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