Sports Column 〜戦士の休日〜

「戦士の休日」と題して、戦うアスリートのOFFの時の素顔、本音トークを、HATOMIがリポート!
不定期にお届けするので、check忘れずに!!

VOL4. 柔道 井上康生 選手
井上康生選手

久しぶりにあの長い坂をあがった。
今日はとてつもなく気温が上がり、関東地方は夏日。階段を昇る体も当然、汗だくになるというもの。
何回か東海大学に続くこの「急階段」を昇った事があったが、今日ほど過酷に感じた日はない。

こんなような階段を、井上氏は父親を背負って昇ったというのだろうか?

「怪人?」
こんな単語までわき上がってしまった訳だが、この急階段の息切れの理由は、年のせいと言う事で、まずは片付けてしまおう。
(注:そんな年齢ではありません)

今日は4件もの取材を、練習前に受けなければならないという井上氏。
しかも僕を除いて、すべてきちんとした媒体で、僕みたいに気ままに書きたい用に書いて、ホームページに載せてしまうようなお気楽ライターとは訳が違う。他社のライターさんと少し話をして、僕の極楽さが身に染みた。
まあ、それがフリーの強みだけどね・・・・。

インタヴューの様子は、これからタップリお届けするが、個人的に電話で話していても、メールをもらっても、やはり井上君は「いつでも冷静沈着」というイメージがある。時折、顔をこすったり、テーブルの上で組み替えるこの大きな手から、すべての技が生み出され、バッタバッタと巨人を薙ぎ倒して行く。
まさに、正義のヒーロー。
そんな正義のヒーローに、正面切って質問をして来たので、まずはその様子から・・・。

全日本選手権決勝での棟田選手との戦いは、本当に手に汗にぎるものでしたが、あの試合の最中にどんな事を考えました?

「決勝は、一度腹ばいにさせられて、このまま行くと負けるな・・・と思ったので、気を引き締めて「攻撃していかなきゃいけないな」っていう開き直りかな。あとはあまり考えてませんでしたね」

井上康生選手

あの判定の旗が上がった瞬間は?

「ホッとしました」

優勝に慣れている井上さんでも、何回優勝しても嬉しいものなんでしょうか。

「優勝慣れなんてないですよ。何度でも嬉しいもんです」

これだけ試合を連覇していると、プレッシャーとか気負いなどは感じませんか?

「プレッシャーなどは、最近はあまりないですね。今は持ってる力をいかに出せるかという事と、多少の緊張感を持ってやってるかな」

小さい頃、「自分は柔道をやるために生まれて来た子やと思う」と言ったそうですが、その言葉を嘘にしていない自分をどう思いますか?

「そうですね・・・それなりの位置には進んでいると思うけど、自分自身まだそこまで柔道が完成されていないと思ってるので、これからも深く追求したいんですけどね」

追求というと?

「技のバリエーション的にもそうだし、ひとつひとつの強さも強化できると思っているので、すべての面でパワーアップしていきたいです」

ここまで取材を進めてきて、井上氏の笑顔が少ない事に気付いた。
理由を問うと、取材続きで疲れてしまったというのと、みんな同じ質問をする、と聞いて、何だか急にハッとなった。
それじゃ、あかん!この「Sports Column」のモットーは「和気藹々とした取材」なのに、この取材は何だか重くドンヨリしていて、時間が経つのがヤケに遅く感じたのはそのせいだ!
そして後半。開き直りで、前日に用意して来たお座成りの文章は捨てて、自分の思うがままに彼に質問をしてみた。
時あたかもワールドカップ。日本vsベルギー戦を数時間前にして、サッカー観戦が好きだという井上氏に再度井上康生 選手ブツかった。

井上康生選手

「日本戦が放映してる時間は、練習してるんで見れないんですよ。代表のチケットはよく取ってもらうんだけど、行事などが入ってしまって、行けなくなってしまう事が多いんですよね。今回のW杯も見に行きたいんだけど、自分自身の試合もあったりして無理なんです・・・」

個人的に応援している選手などはいます?

「やっぱり中田さんや小野さんには注目してるし、頑張って欲しいですね」

サッカー選手も柔道選手もメンタル的には似ていると思いますか?

「同じだと思いますよ。団体競技であろうが、個人競技であろうが変わらないと思うけど、柔道は一発で終わってしまうから、そういう面ではサッカーとは違うと思いますね」

でもサッカーは走り回れるけど、柔道は違うでしょ?小さい畳で・・・ちなみにあれって何畳ぐらいあるの?

「何畳だっけ?分かんねえや(笑)・・・でも柔道は走って広範囲には行けないけど、その分小さくて色々な技が繰り出せますからねぇ。結果的には、あまりサッカーも柔道も変わらないんじゃないですか(笑)」

他に代表での注目選手は?

「戸田さんってすごい髪の色してますよね。何十万かけてやったんでしょ?あと明神さんって、「智和」って言うんですよね?俺の兄貴と一緒の名前なんですよ、字までね(笑)」

じゃあ、ぜひ機会があればみんなで対談でも・・・。

「おおっ、こちらこそ、ぜひ会いたいですね」

彼らと会ったら、やはり何か吸収するものはあると思いますか?

「やっぱり、色んなスポーツ選手の意見って僕自身の参考にもなるし、特にサッカーなんかは周りのサポーターがすごいでしょ?どういう心境であんな中プレイしてるのか、聞いてみたいですしね」

柔道を見るお客さんは静かだけど、サッカーはサポーターだったはずの人達の応援が野次に変わったりする。その点は?

「勝手なこと言いますからね。何も言わずに裏方でやってくれるのが本当のファンだと思うし、表で何だかんだ言うのは、あれは本当のファンじゃないですよ」

なるほど・・・。

「でも、それをすべて相手にしてたら大変だし、敵に回しても怖いしね(笑)そういうのはもう代表の人達は分かりきってると思うし、すごく大変だなっていうのは感じますよね」

井上康生選手

そんな井上君の夢は何ですか?柔道に限らず、何でも。結婚とか(笑)

「結婚かぁ・・・(しみじみと)結婚する前に、まず彼女作らなきゃいけないっていう大きな難関もあるし、いい出会いを見つけなきゃっていうのもあるし」

いい出会いはないんですか?

「ないですね!(キッパリ)何でないんだろう?ハハハ・・・・いい出会いがあればなあと」

女の子だと、井上君のガタイに圧倒されてしまうんじゃない?

「そうですね・・・でも、人を見掛けで判断しちゃイケナイ(笑)」

じゃあ、大好きな映画は誰と?

「モンスターズ・インクを後輩と。後輩と行ってる段階でヤバイですよね」

では最後に、このページを見てくれている方々へメッセージを。

「頑張りますので、応援よろしくお願いします」

井上君はよく、「わたし」という言葉を使う。
もちろん「ボク」、「おれ」という単語も使うのだが、武道家としての心得があるのか、その点はいつも感心してしまう。
そして井上君の声はとても低く、子守唄のような独自な喋り方に気づくと吸い寄せられていることがある。
試合中、相手選手に喋りかけているとは到底思えないが、こんな感じで引き寄せて、敵を畳の上に倒してしまうのか。
これからもこの「子守唄」で、どんどん頂点に上がっていってほしい。

取材&構成  :  羽富敏彦
カメラ  :  U-SUKE (Thanks!)
協力  :  東海大学 柔道研究室
井上康生選手プロフィール 井上康生 (いのうえ こうせい)

1978年5月15日宮崎県生まれ。24歳。

小学校時代から全国大会などで優勝。東海大相模付属高校時代は21年ぶりに高校生として全日本選手権初出場。
97年国際大会初出場のオーストラリア国際大会で優勝。
99年世界選手権初優勝、そして記憶に新しい2000年シドニー五輪では、母の死を乗り越え100kg級で金メダルを獲得。
以降、全日本選手権大会、世界選手権大会(ミュンヘン)、などで連覇を遂げ、今後は無差別級に出場する予定。
現在、東海大学大学院生。綜合警備保障所属。

183cm、100kg。

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